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水回りに無垢フローリングはダメ!?木材のプロが正しい考え方を教えます!

「キッチンや洗面所にも、憧れの無垢フローリングを使いたい…」

無垢材で統一された温かみのある空間はとても素敵ですよね。一方で「水回りに無垢床を使うのは、やめた方がいい」という声も多く耳にし、「挑戦して後悔しないだろうか…」と不安に感じているのではないでしょうか。

実際ネット上でも「対策すれば大丈夫」という意見と、「絶対に後悔する」という意見がいくつもあり、何を信じれば良いのか分からなくなってしまうと思います。

本記事はそんな「水回りの無垢床」に関する悩みに、木材のプロの知見を踏まえてお答えしていきます!

この記事を読めば、こんな悩みが解決します!
  • 水回りに無垢フローリングはNG?
  • 水回り採用するとどんなリスクがある?
  • リスク覚悟で採用することはできる?
この記事を書いた人
Kurumi

2021年入社 / 埼玉県出身 / “他社で断られたデザインを叶える”をモットーに「デザイン×コスト」を踏まえた最適な提案を得意とする。個人で動画制作を行うなどクリエイターとしての一面も。

「水回りに無垢床はやめた方がいい」と言われる理由

天然木ならではの風合いが魅力の無垢フローリング。リビングやダイニングだけでなく、せっかくならキッチンやトイレなどの「水回り」にも活用したいと思われる方は多いと思います。

しかし結論からお伝えすると、当社としても「水回り」への無垢フローリング採用は推奨していません。

それは単に「手入れが大変だから」といった理由ではなく、木材という素材が持つ物理的な特性があるからです。

憧れだけで進めてしまう前に、まずは専門家としての見解をお伝えしていきます。

そもそも:なぜ木材は水に弱いのか?

そもそもなぜ木材は水に弱いとされているのでしょうか。そのメカニズムは、大きく分けて2つあります。

①:吸水・放水によって「変形」が起こるから

1つ目は水分の吸収・放出による物理的な「変形」が起こること。

木材は伐採された後も呼吸を続けています。空気中の湿度が高いと水分を吸収して膨らみ、逆に乾燥すると水分を放出して縮みます。これは無垢材が持つ自然な特性であり「調湿作用」というメリットにもなります。

しかし水回りという常に水濡れの可能性がある場所では、この伸縮運動が頻繁に繰り返されることになりますから、濡れては乾き、また濡れて…、と繰り返されることで、木材は寸法変化に耐えきれずに「反り」や「割れ」といった変形が起こってしまうのです。

②:木材そのものが腐ってしまうから

もう1つは、木材腐朽菌(もくざいふきゅうきん)による「腐食」が起こるからです。

空気中には目に見えない無数の微生物が存在します。その中には、木材の主成分(セルロースやリグニン)を栄養源とする「木材腐朽菌」も含まれています。

この菌が活発に繁殖するには「水分」が不可欠。 普段の室内環境では水分が不足しているため、菌は繁殖できないのですが、常に湿気が多く、濡れやすい水回りではこの腐朽菌が木材を分解しはじめ、最終的に木材を腐らせてしまうのです。

つまり水回りの無垢床は、常に「変形」と「腐食」という2つのリスクに晒され続けることになります。これが私たちが「水回りは原則NG」とお伝えしている理由です。

より詳しい木材と水分の関係性については、こちらの記事をご覧ください!

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【何が起こる?】
水回り採用で起こる3つのリスク

では実際に水回りに無垢フローリングを採用した場合、どのようなトラブルが起こるのでしょうか。

ここからはお客様から寄せられる相談や、実際の失敗事例としてよく見られる具体的なトラブルをご紹介します。

①:反り・変形が起こってしまう

まず先ほどもお伝えしたように無垢床が水分を吸って膨張し、弓なりに反り返ってしまったり、部分的に浮き上がってきたりします。逆に乾燥する季節には板が縮み、隙間が目立つことも。

見た目の問題だけでなく、床が波打つことで歩きにくくなったり、ギシギシと音が出る「床鳴り」の原因になったりもします。

②:腐食や汚れが発生してしまう

水回りからのわずかな水漏れや、見えない場所での結露などが長期間続くと、無垢床が腐ってスポンジのようにブヨブヨになってしまうことがあります。

湿気がこもりやすい脱衣所や洗面所では、床の表面に黒カビがポツポツと発生したり、水滴が乾いた跡が白っぽく残る「輪ジミ」ができることも。

③:頻繁なメンテナンスが必要になる

これらのトラブルを防ぐためには、常に床の状態に気を配り、こまめな手入れを続ける必要があるわけですが「水滴が落ちるたびに神経質になってしまう」「子供が水をこぼすたびにヒヤヒヤして落ち着かない」といった声もよく伺います。

日々の暮らしの中でこのような心理的ストレスを感じ続けてしまうことも、当社では懸念点のひとつとしてお伝えしています。

【それでも使いたい方向け】
水回りで採用するならどこ?

「メンテナンスが多くなっても無垢床にしたい!」というのであれば、採用自体は可能です。

当社でも“非推奨”とお伝えはしていますが、施主様がきちんとお手入れを行い、それがライフスタイルが合うのであれば、導入を検討いただくのも良いと思います。

ただし「水回りの場所」によっては、やはり避けた方が無難というエリアもあります。そこでここからは、

  • 浴室・脱衣所
  • キッチン・洗面台周り
  • トイレ

上3つの水回りエリアは無垢材を避けるべき場所かどうか?を解説していきます。

ご自身のライフスタイルと照らし合わせながら、どこまでなら許容できそうか、あるいはどの場所は避けるべきかを判断する参考にしていただければと思います!

①浴室・脱衣所:できるだけ避けるべき

浴室床への無垢フローリング採用は、可能な限り避けていただきたいです。

浴室は常に水が飛ぶ上に、高温多湿になってしまうため、定期的にメンテナンスをしても劣化が進んでしまいます。

脱衣所も居室の延長として考えられがちですが、お風呂上がりの濡れた体や髪から滴る水滴で、床は毎日想像以上に濡れます。これを毎回完全に拭き取り、湿気がこもらないように管理し続けるのは非常に難しいもの…。

むしろ無理に統一感を求めず、脱衣所は、水に強いタイルやサニタリーフロアにするなどと割り切ることで、デザイン的なメリハリが生まれて空間の魅力が高まります!

②キッチン・洗面台周り:メンテナンスの手間を要検討して採用OK

キッチンや洗面台周りへの無垢フローリング採用は、水回りの中でも希望される方が非常に多くいらっしゃいます。

結論、キッチン・洗面台は「飛散する汚れ」をメンテナンスする習慣がつけられるのであれば、採用を検討いただいても良いかと思います。(ただし頻繁なお手入れは必須になります)

キッチンはシンク周りでの「水はね」と、調理中の「油はね」が二大リスクとなります。水はねは、その都度すぐに拭き取る習慣を徹底できれば、無垢材へのダメージはある程度防げます。

ただし油分は、一度染み込むと黒いシミになってしまう可能性があるので「揚げ物・炒め物をする際は床に新聞紙を敷く」といった養生や「多少のシミは“味”と捉える」という割り切りも必要になります。

洗面台周りも同様で、手洗いや洗顔、歯磨きなどで水滴は頻繁に飛び散ります。特に小さなお子様がいるご家庭では、水遊びなどで床が水浸しになることもリスクとしてあります。

もちろん実際にキッチンに無垢床を採用し、「質感には大満足で後悔していない」という方も一定数いらっしゃいますが、やはり少しでもメンテナンスに不安を感じるようであれば、採用は避けていただくことが無難です。

③トイレ:“尿はね”をすぐ掃除できれば採用OK!

水回り3か所の中では、トイレが最も水によるリスクが低いです。

トイレ床が水浸しになるようなことはほとんどありませんし、あっても手洗いの水はね程度なので、木材の腐食やカビといった深刻なトラブルにつながる可能性は低いです。

しかし尿の飛び散り、特に男性が立って用を足す場合や、小さなお子様がトイレトレーニング中のご家庭では尿が床に飛び散るリスクがあります。

また無垢フローリングは吸水性が高いため、尿が染み込んでしまうとシミやアンモニア臭の原因となります。

とはいえ、例えば「表面を硬い塗膜でコーティングするウレタン塗装を選ぶ」「必ずトイレマットを敷く」「こまめに拭き掃除をする」といった対策を徹底すれば、尿の染み込みをある程度防ぐことができます。

大人だけの世帯など、尿はねのリスクが比較的少ない環境であれば、トイレは水回りの中で最も無垢床を採用いただいても良いかと思います。

ただし採用する際には「尿汚れのリスクはゼロではない」ことをしっかりと認識し、適切な塗装やご家庭のトイレルールをセットで考えることが大切です!

水回りにおいて無垢フローリングを採用する「3つの必須条件」

ここまで水回りに無垢フローリングを採用するリスクを解説してきましたが「やはり、うちには難しいかもしれない」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

ここからは「それでも憧れを諦めたくない」と考える施主様に向けて、水回りに無垢フローリングを採用いただく際の「3つの必須条件」をご紹介します!

条件1:「水に強い木材」を選ぶ
条件2:仕上げは「ウレタン塗装」に!
条件3:できるだけ“水分を残さない”工夫を!

条件1:「水に強い木材」を選ぶ

大前提、木材はほぼすべてが水分には弱いです。

しかし樹種によっては、耐水性に優れたものもありますので、水回りに無垢フローリングを採用する場合は、そもそも「水に強い木材」を選ぶことが大切です。

高密度な木材(ナラ・クリなど)

木の組織が緻密で硬く、物理的に水が内部に浸透しにくいタイプの木材です。

代表的なのはナラ(オーク)やクリといった広葉樹。特にナラは、ウイスキーの樽に使われることからも分かるように、非常に水を通しにくい性質を持っています。硬くて傷がつきにくいため、傷からの浸水を防ぎやすいというメリットもあります。

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抗菌成分がある木材(桧・杉など)

木自体にカビや腐朽菌の繁殖を抑える天然の成分(ヒノキチオールなど)を豊富に含んでいるタイプです。代表的なのは「桧」や「杉」などの針葉樹。

これらの木材は密度が低く柔らかいですが化学的な防御力で腐食を防ぎます。「木風呂」に使われるのはこの性質を利用しているからです。

油分を多く含む木材(チーク・ウォールナットなど)

木自体に天然の油分(樹脂)を豊富に含み、その油分が天然のワックスのように水を弾くタイプの木材です。

代表的なのはチークやウォールナットなど。特にチークは豊富な油分によって非常に高い耐水性を持っており、豪華客船の甲板など過酷な環境にも採用されています。

条件2:仕上げは「ウレタン塗装」に!

水に強い樹種を選んだとしても、木材がむき出しのままではいずれ水の影響を受けてしまいます。そこで重要になるのが木材の表面を「塗装」で保護すること。

無垢材の塗装には大きく分けて「ウレタン塗装」と「オイル塗装」の2種類がありますが、水回りにおいては「ウレタン塗装」を選択する様にしましょう。

ウレタン塗装とは、フローリングの表面に樹脂でできた透明な膜(塗膜)を形成する塗装方法です。この塗膜がラップのように木材を覆い、水や汚れが内部に浸透するのをある程度防いでくれます。

またオイル塗装と異なり、市販の床クリーナーでもメンテナンスできるので、拭き掃除などによる手入れも簡単。

一方で表面が塗膜で覆われるため、無垢材本来の木の質感やしっとりとした足触りは若干薄れてしまいますので、その点だけ留意しておきましょう。

仕上げ塗装の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています!

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条件3:できるだけ“水分を残さない”工夫を!

① 濡れたらすぐに拭く

たとえウレタン塗装であっても、長時間水分を放置すれば、塗膜の隙間から水分が浸透してしまいます。

キッチンでの洗い物、洗面所での手洗い、お風呂上がりなど、床が濡れたら「すぐに乾いた布で拭く」。この習慣を徹底いただくことが大切です。

② 湿気をためない(換気・乾燥)

カビや腐朽菌は湿気が大好物。水回りでは常に換気を心がけ、空気をよどませないようにしましょう。

入浴後は必ず換気扇を長時間回す、調理中はレンジフードをしっかり使うといった基本的なことに加え、可能であれば除湿機を効果的に使いましょう!

③ マットで物理的にガードする

水や汚れが頻繁に飛び散る場所は、あらかじめマットを敷いて無垢床を保護しましょう。

また揚げ物など油が多く飛び散る調理をする際は、一時的に床に新聞紙やビニールシートを敷くといった養生もぜひ行ってください。

「水回りの無垢床」に関するよくある質問

Q1. キッチンマットやトイレマットは必須ですか?

A. はい、必須とお考えください。

デザインの好みでマットを敷きたくないというお気持ちも理解できますが、水回りでの無垢床を美しく保つためには、マットによる物理的な保護が重要です。

特に汚れが集中するキッチンのシンク・コンロ周り、洗面台の足元、トイレの便器周りは、マットがあるのとないのとでは床の劣化スピードに大きな差が出ます。

Q2. ペットを飼っていても無垢床は大丈夫ですか?

A. はい、問題ありません。

ペットを飼っているご家庭でも無垢フローリングの使用は問題ありませんし、実際にペットを飼われている多くの方に無垢フローリングの木材を楽しんでいただいています。

気になる箇所にはマットや絨毯を使用したりしてペットの水分や尿による床への影響を避けることで、無垢フローリングを長持ちさせられます。

Q3. 水とは関係ありませんが、普段のお手入れで掃除機は使えますか?

A. はい、問題なくお使いいただけます。

日常のホコリやゴミの除去には、掃除機が最も効率的です。ただし、掃除機のヘッドに硬いブラシや金属部品がついている場合、床の塗装(ウレタン塗膜)を傷つけてしまう可能性があります。

ヘッドの裏側を確認して柔らかい素材のものを選ぶか、フローリング用のヘッドに交換すると、より安心してご使用いただけます。

まとめ:水回りへの採用はライフスタイルにあわせて検討しましょう!

今回は「水回りの無垢床」をテーマに、そのリスクと実現のための具体的な条件について解説してきました。

改めてお伝えしますが、本記事は水回りへの無垢フローリング採用を推奨するものではありません。むしろ当社としては「水回りNG」とお伝えすることがほとんどです。

憧れだけで採用するにはリスクが高い水回りの無垢フローリング採用。しかしその美しさが“特別な価値を持っていること”も私たちは知っています。

当社はこれまで『できないから逃げない』をモットーに、多くの内装デザイナーや設計士、そして施主様の想いに向き合ってきました。

もちろん物理的に難しいものは「難しい」とお伝えします。しかし私たちの知識と技術で“叶う内装デザイン”があるならば、真摯に向き合い、全力でご提案いたします。

難易度が高い採用だからこそ、おひとりで検討するのではなく、私たち木材のプロフェッショナルに一度ご相談いただければと思います。

この記事を書いた人
Kurumi

2021年入社 / 埼玉県出身 / “他社で断られたデザインを叶える”をモットーに「デザイン×コスト」を踏まえた最適な提案を得意とする。個人で動画制作を行うなどクリエイターとしての一面も。

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