水に強い木材とは?原理から木材を採用した内装デザイン事例を解説!

「木材は水に弱い」というのが一般常識ですが、実は樹種によって水への耐性、つまり「耐水性」が違うことをご存じでしょうか?例えば日本のお風呂場によくヒノキが使われているなど、水分にある程度の耐性がある樹種もいくつか存在しています。
そこで本記事では「そもそも木材がなぜ水に弱いのか?」をはじめ、具体的にどういった樹種が水に強いのかまで詳しく解説していきます!
- なぜ木は水に弱いの?
- 科学的に見て「水に強い木」ってどんな木?
- 耐水性が高い樹種一覧は?
この記事を書いた人

Kurumi
2021年入社 / 埼玉県出身 / “他社で断られたデザインを叶える”をモットーに「デザイン×コスト」を踏まえた最適な提案を得意とする。個人で動画制作を行うなどクリエイターとしての一面も。
そもそも:なぜ木材は水に弱いの?
まずは木材が水に弱いとされる理由をご紹介します。水による劣化の原因は大きく分けて2つあります。
理由1:木材腐朽菌の繁殖による「腐り」
水による木材の劣化と聞いて一番に連想するのが「腐食」でしょう。
木材が腐る原因は、「木材腐朽菌」という目に見えない微生物の働きによるものです。彼らが木材を分解してしまうことで、木は強度を失い、ボロボロになってしまいます。
この腐朽菌が活発に活動するためには、以下の4つの条件がすべてそろう必要があります。
- 温度(3℃〜45℃の範囲)
- 湿度(木材の含水率が25%以上)
- 酸素(空気)
- 栄養分(木材の成分であるセルロースなど)
キッチンやお風呂といった水回りは、まさにこの条件がそろいやすい環境です。しかし逆に言えば、この4つの条件のうちどれか一つでも欠ければ、腐朽菌の繁殖は抑えることができます。
とはいえ、酸素や温度は住環境から排除するわけにはいきませんから「湿度に強い」もしくは「栄養分が比較的少ない樹種」が腐りにくい木材といえます。
理由2:水分の吸収・放出による「反り・割れ」
とはいえ木材が水分で劣化する理由は腐るだけではありません。見落とされがちですが、水分の吸収と放出を繰り返すことによって緩やかに変形するケースもあります。
木材は湿気が多い環境では水分を吸い込んで膨らみ、乾燥した環境では水分を吐き出して縮む「呼吸」をしています。この性質自体は、室内の湿度を調整してくれるというメリットにもなりますが、水回りでは注意が必要です。
木材内部の水分量が約30%を下回ると目に見える形で収縮を始めます。この収縮は、木の繊維の方向によって度合いが異なり、一枚の板の中でも不均一に起こります。その結果、木材内部に大きな力がかかり、「反り」や「割れ」といった形状変化を引き起こしてしまうのです。
水に濡れては乾く、というサイクルが頻繁に繰り返される場所では、この伸縮運動も激しくなり、塗装のひび割れや板の反り返りといったトラブルにつながりやすくなるのです。
【全3タイプ】水に強い木材の特徴とは?
このような「腐り」や「伸縮」に強いと言われている木材は、主に以下の3つのタイプに分類できます。
タイプ1:高密度で物理的に水を弾く木材
まず1つ目は、組織が緻密でずっしりと重い「高密度」な木材です。
シンプルに、細胞の隙間がぎゅっと詰まっているため、物理的に水が内部に浸透しにくいという特長があります。硬くて丈夫なため表面に傷がつきにくい点も大きなメリットです。キッチンカウンターのように、お皿を置いたり調理器具が当たったりする場所では、傷から水が染み込むリスクを減らせるため、特に重宝されます。
この密度は樹種ごとに全くことなり、例えばイメージしやすい「ヒノキ」などはとても軽く密度も小さい。逆にチークなどのずっしり重い木材は密度が高いです。これを木材の「気乾比重」といいます。
気乾比重についてはこちらの記事で詳しく解説していますのでぜひご覧ください!

木材強度・硬さは「気乾比重」で分かる!内装材の選定ポイントも踏まえて解説!
気乾比重とは 気乾比重(きかんひじゅう)とは、木材の重さを表す指標の一つで、気乾状態(きかんじょうたい)の無垢材と、同じ体積の水の重さと比較して求める値です。 具体的には、1立方センチメートル(㎤)の水の重さを1グラムとしたとき、乾燥した木材1㎤の重さが何グラムかを比率で表します。 気
タイプ2:低密度で乾きやすく腐りにくい木材
意外に思われるかもしれませんが、高密度な木材とは正反対の、軽くて柔らかい「低密度」な木材の中にも、水に強いものがあります。
これには一時的に水分を吸い込むものの、細胞間の隙間が大きいため乾きやすい(=水を素早く放出できる)という利点があります。木材の内部が長時間湿った状態になりにくいため、結果的に腐朽菌が繁殖する隙を与えません。
また、伸縮による変形量が比較的小さく、割れにくいというメリットもあります。
豆知識:水に強いのは広葉樹?針葉樹?
一般的に、ずっしりと重い「広葉樹」(ナラ、ウォールナットなど)の方が、軽くて柔らかい「針葉樹」(スギ、ヒノキなど)に比べて、水に強い傾向があります。 これは、広葉樹の方が細胞の密度が高く、菌の繁殖を抑えるタンニンなどの成分を多く含んでいることが多いためです。もちろん、ヒノキのように針葉樹でも水に強いものはありますが、一つの傾向として覚えておくとよいでしょう。

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タイプ3:天然の油分が菌の繁殖を抑える木材
三つ目は、木自体に天然の油分や樹脂を豊富に含んでいるタイプの木材です。
この油分が天然のワックスとして水を弾き、内部への浸透を防いでくれます。さらに、油分の中には腐朽菌やシロアリが嫌う成分が含まれていることも多く、防腐・防虫効果も期待できる優れものです。
豆知識:塗装でさらに耐水性を高められる!
木材そのものが持つ性質に加えて、表面の仕上げ方によっても耐水性を高めることができます。代表的なのは「オイル塗装(オイルフィニッシュ)」と「ウレタン塗装」です。
- オイル塗装: 木の内部にオイルを浸透させ、木材本来の質感を活かしながら撥水性を持たせる方法です。経年変化を楽しみたい方におすすめです。
- ウレタン塗装: 木の表面に硬い樹脂の膜を作り、水や汚れを強力にブロックする方法です。メンテナンスの手間を減らしたい場合に適しています。
ただし、どんな塗装を施しても濡れたまま放置するのは禁物です。「濡れたらすぐに拭く」という心がけが木の美しさを長く保つ一番の秘訣です。

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<高密度タイプ>
ナラ
まずは広葉樹の代表格の「ナラ」です。硬く重く、ウイスキー樽に使われるほど水を通しにくい性質を持ちます。また「虎斑(とらふ)」と呼ばれる美しい木目が特徴です。
日本産、特に北海道産のナラは耐久性と耐水性が高いことから「ジャパニーズオーク」という世界に誇る銘木にもなっています!

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欅(ケヤキ)
日本を代表する銘木の「欅(ケヤキ)」も密度が高い木材です。各所の神社仏閣の建材にも使わるほど耐水性が高いです。また水に強いだけでなく、年輪がはっきりと現れる独特の木目模様である「玉杢(たまもく)」や「如鱗杢(じょりんもく)」があるのも特徴的な木材です!

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クリ
そしてクリは「高密度だから耐水性が高い」というのはもちろん、タンニンを豊富に含んでいるため防腐処理なしで橋の土台にも使われるほど腐りにくい木材です。
ただし内装材として採用される場合は、原則クリア塗装などの”仕上げ塗装”が必ず必要になります。

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<低密度タイプ>
ヒノキ
日本固有種の「ヒノキ」は針葉樹ならではの軽くて柔らかい性質を持ちながら、特有の抗菌成分(ヒノキチオール等)と水はけのよさで腐りにくい性質を持ちます。
また余談ですが、ヒノキは日本にしか自生していない固有種として知られています。同じヒノキ属でも北米や台湾に他の類縁種はありますが、実は天然のヒノキは日本にしか自生していないんです。

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スギ
日本で最も多く植えられている「スギ」もヒノキと同じく低密度タイプです。軽くて柔らかいですが、湿気を溜め込まずに放出する能力が高いため、水に強い樹種となっています。
こちらも余談にはなりますが、実は世界には「スギ属の木」は1種だけしか存在せず、自生域も日本列島に限られます。学名である「Cryptomeria japonica」は「隠れた財宝(cryptomeria)+日本の(japonica)」という語源を持ち、日本だけにしか生息しないことから命名されました。

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サワラ
ヒノキと同じく、古くから風呂桶や浴槽に多用されてきたのが「サワラ」です。「木風呂といえばサワラ」といわれるほど水分(湿度)に強く、狂いが少ないのが特徴です。ヒノキに似た性質を持ちますが、香りはより穏やかです。
<多油分タイプ>
チーク
世界三大銘木の一つとされる「チーク」は天然のオイルを(タール)豊富に含み、それ自体が水を弾くため、船舶の甲板にも使われるほど耐水性が高い木材です。
またチークは水だけでなく、密度が高くて「硬い・丈夫な木材」としても有名で、これはチークの密度(気乾比重)が0.69と非常に高くことからきています。

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ウォールナット
チークと同じく世界三大銘木の「ウォールナット」も油分を豊富に含んでいるため耐水性が高い木材です。
またウォールナットは硬さと弾力性も兼ね備えていて、伐採後の乾燥や加工中に歪みやねじれが生じにくいという特性を持っています。そのため、内装用木材で起こりがちな「木材の狂い」といった部分を最小限に抑えられるのです!

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「ウォールナット」ってどんな木材? ウォールナットは、クルミ科クルミ属の落葉広葉樹で、最高品質のウォールナットは「アメリカンブラックウォールナット」とも呼ばれています。主にアメリカ東部から中部の標高の高い山々に自生しており、厳しい寒さの中でゆっくりと成長していきます。そのため、硬く粘りのある材質を
ウリン
東南アジア原産の硬質な広葉樹で、「アイアンウッド(鉄の木)」と称されるほど耐久性に優れています。こちらも非常に多くの樹脂分を含み、耐水性が高いのはもちろんシロアリなどの害虫を寄せつけづらい木材です。
樹種によって強みもさまざま、木材の特徴を踏まえた「内装材選び」が大切!
本記事では「水への耐性が高い木材」についてご紹介しましたが、大前提覚えておいていただきたいことが「木材は水に弱い」ということ。樹種ごとの特徴によって多少なりの差はあれど、原則、木材に水分はNGと覚えていただくようお願いします。
ただし内装材の選択肢に「木材」を入れる場合、キッチン周りや商業施設など、どうしても水分が付着してしまう恐れがあることも考えられると思います。例えば…、
- カフェに採用したいので、少しは「耐水性」を考慮したい…
- 商業施設の天井に採用したいので「湿気・調湿性」を担保したい… など。
そういった内装デザインの“あと一歩”で迷うことがありましたら、ぜひ本記事で紹介した樹種を参考位にしていただければと思います!
当社は「200種以上」のラインナップから、最適な木材をご提案します!
当社では人気のナラ、チーク、タモ、ウォールナットをはじめ豊富な樹種をご用意。
さらにオイル塗装やウレタン塗装、着色塗装に床暖仕様などなど…、およそ200を超える豊富なラインナップを取り扱っています。また本記事でも触れたように、例えばキッチンなら水に強い木材を、例えばフローリングに使用するなら硬い木材をと、内装にあわせたさまざまなご提案も可能です。
- オシャレは当然担保したい…
- あわせてこんな機能も木材にあったらいいな…
- さらには「仕上げ加工」や「幅カット」までやってもらえると嬉しい…
このような内装デザイナーの“こだわり”に、コストや納期、施工後の姿まで見据えた柔軟なご提案で、デザインの自由度と機能性・コスパのバランスにもとことん寄り添い、どうしたら実現できるかを一緒に考えてまいります。
内装設計時の木材の相談なら、ぜひ当社にご相談くださいませ!
この記事を書いた人

Kurumi
2021年入社 / 埼玉県出身 / “他社で断られたデザインを叶える”をモットーに「デザイン×コスト」を踏まえた最適な提案を得意とする。個人で動画制作を行うなどクリエイターとしての一面も。