“無塗装”は原則NG!内装木材の仕上げ塗装・デザイン塗装の役割を徹底解説

「オイル仕上げとウレタンって何が違うの?」「UV塗装って聞くけど、結局何が良いの?」など内装設計で木材を使う際、仕上げ塗装に関する用語を耳にするタイミングがあるかと思いますが…、実際にこれらの違いをクライアントにうまく説明できる内装デザイナー様は少ない気がしてます。
そこで本記事では、設計士・内装デザイナーの皆さまからよくいただく「木材の塗装仕上げ」の疑問について、我々内装木材のプロが詳しく解説していきます!
- そもそもなぜ木材に塗装が必要なの?
- オイル、ウレタン塗装の決定的な違いとは?
- 着色したい場合、どんな順番で進めるべき?
- デザインにこだわるなら、どんな選択肢がある?
この記事を書いた人

Kurumi
2021年入社 / 埼玉県出身 / “他社で断られたデザインを叶える”をモットーに「デザイン×コスト」を踏まえた最適な提案を得意とする。個人で動画制作を行うなどクリエイターとしての一面も。
大前提:木材は「仕上げ塗装」が必須!
個人宅からオシャレなカフェ、商業施設に至るまで、内装で使用されている木材には必ず「仕上げ塗装」が施されています。
ここでいう塗装というのは色味をつける「デザイン塗装(着色塗装)」ではなく、木材表面へのキズや汚れを防ぐための保護塗装のイメージです。
塗装されていない木材というのは、人間で言えば「素肌」の状態です。乾燥や紫外線から守られなければ肌が荒れてしまうように、木材も過酷な環境に直接さらされ続けると美しさや機能性を損なってしまいます。
塗装が施されていない木材は、スポンジのように空気中の湿気やこぼした水分を吸収します。これがシミやカビ、さらには木の反りや割れといった変形の原因になり、紫外線は木材の色を褪せさせ、表面を劣化させてしまうのです。
仕上げ塗装は、こうした外部の刺激から木材を守る「保護膜」の役割を果たしています。
仕上げ塗装の種類は?
仕上げの方法にはたくさんの種類があるようにも見えますが、まずは大きく「オイル塗装」と「ウレタン塗装」の2つに分けられます。
オイル塗装:油分による乾燥保護
オイル塗装とは名前の通り、天然由来の樹脂オイルを主成分とした塗料を木材の内部に浸透させて、乾燥から保護する仕上げ方法です。一見ナチュラルな塗装ですが、無塗装よりも汚れや湿度変化に強くなります。
表面に膜を作らない塗装法なので、木材本来の質感や手触りを楽しめますし、木の呼吸を妨げないため、木が持つ調湿作用なども期待できます。
ただし長時間水分を放置するとシミになったり、直射日光に当て続けると変色や反り、割れが発生する可能性もあるので注意が必要です。
「シックハウス症候群」に配慮したいケースにも推奨
オイル塗装は化学成分が少なく人体にも優しい塗装方法です。 天然木を使うのはもちろん、「化学物質に敏感な人にも配慮した設計にしたい」「できるだけ自然な空間に仕上げたい」といった内装へのこだわりがある方にオイル塗装が選ばれています。
ウレタン塗装:ウレタン樹脂による被膜保護
ウレタン塗装とは、木材の表面をウレタン樹脂の硬い膜でコーティングする「被膜(ひまく)保護」と呼ばれる仕上げ方法です。
表面が硬い塗膜でコーティングされているため、水や汚れをしっかりと弾くことができます。食べこぼしなどもサッと拭き取ることができますし、市販のフローリングワイパーなどを使った掃除が可能ですので、メンテナンス性を重視する場合にはおすすめの塗装方法です。
ただし表面がプラスチックのような膜で覆われるため、木の質感や手触りは人工的になりがちで、木材特有の調湿効果などは落ちてしまします。
“被膜塗装”を深掘り!
「オープン塗装」と「UV塗装」について
先ほど樹脂で塗膜を作る仕上げ方法とご紹介したウレタン塗装ですが、実はさらに「オープン塗装」と「UV塗装」の2つに分けることができます。
ウレタンを自然乾燥させる「オープン塗装」
オープン塗装とは、木材の導管(木目)を塗料で埋めずに、木材の質感や木目を活かした塗装のことで、薄い塗膜で木材表面を保護しつつ木の風合いを残す塗装方法です。
天然由来のオイルではないため、木材内部までしっかり浸透することはありませんが、それでも時間をかけて徐々に木材表面に塗膜をつくるため、被膜塗装でありながら木目などをしっかり感じやすいのがポイントです。
オープン塗装が向いている箇所
- 天然木の「木目・節」をできるだけ残したい
- でも月に1回は掃除・メンテナンスしたい
- フローリングなど、できるだけ傷への耐久性が欲しい
紫外線で固める「UV塗装」
ゆっくりウレタン塗膜を形成するオープン塗装に対して、紫外線に反応して硬化する“ウレタン樹脂”をUV照射によって瞬時に硬化させて塗膜をつくるのが「UV塗装」です。
ハンドメイドでも使われるUVレジンをイメージすると分かりやすいかもしれません。
オープン塗装よりも均一で厚い塗膜を形成して耐水・耐熱性を高めることができるので、傷がつきやすいテーブルの天板や、商業施設の床材などに多く採用されます。たった数秒で仕上げ塗装が完了する(=短納期である)のも大きなメリットですね。
ただしUV塗装は木目の凹凸までウレタン樹脂で埋めてしまうので、オープン塗装よりも天然木ならではの木目を感じづらくなります。またUV硬化は、専用の機械で大量照射を行うため、小ロットでのご注文ではややコストが嵩んでしまいます。
そのため例えば、オフィスやショッピングモールのフローリングなど、
- 内装材として大量導入したい
- 強度・メンテナンス性も必要な箇所に採用したい
- 微細な木目まではそこまで気にしない
といったシチュエーションでUV塗装を選択いただくことが多いです!
【よくある誤解】「UV塗装=紫外線に強い」ではない!
「UV塗装」という言葉を聞くと、「紫外線に強い塗装」と誤解されることがありますが、これは間違いです。 上でも紹介したように、UV塗装の「UV」は「紫外線による硬化」を意味しており、塗料の乾燥や硬化を“紫外線で促す技術”のことを指しています。そのため、UV塗装が紫外線そのものからの保護性能を意味するわけではありません。 また木材は、直射日光などで紫外線を長時間受けつづけると「経年変化」が進みます。こういった経年変化を抑制できるわけでもありませんので注意いただければと思います。
オイル塗装かウレタン塗装かはどう決めるべき?
オイル塗装とウレタン塗装はどちらにすべきか?についてまとめると、これは結論、これはどんな空間をイメージしているのかによって変わってきます。
「できるだけ自然な空間に寄せたい」「化学物質に敏感な人に配慮した設計にしたい」といったこだわり空間(古民家カフェなど)であれば、メンテナンスが必要でもオイル塗装をおすすめしています。
それよりも「メンテナンスの手間をできるだけ減らしたい」「傷・汚れがつきやすい商業施設を想定している」というケースならウレタン塗装にしましょう。
意匠性を決める「デザイン(着色)塗装」について
ここまで木材を保護することを主な目的とした「仕上げ塗装」を解説してきましたが、塗装にはデザインを目的とした「デザイン(着色)塗装」もあります。
デザイン塗装の目的は「木材に色を付ける」こと
デザイン塗装(着色塗装)とは、顔料や染料を含む塗料を使って木材そのものに色を付けていく作業です。
クリア塗装が木の素材を「活かす」ための塗装だとすれば、デザイン塗装は、木目を透かしながら落ち着いた色味に変えたり、あるいは木目を完全に塗りつぶしてホワイトやブラックといったモダンな表情を与えたりと、素材を積極的に「変化させる」ための意匠的な塗装です。
注意:着色塗装後も“仕上げ塗装”は必須!
着色塗装を行った木材であっても、“仕上げ塗装”は必須です。
そもそも上で話した通り、着色塗装は木材に色をつけるデザイン塗装ですから、木材を外的要因から守る仕上げ塗装とは全く効果・仕上がりが異なります。デザイン塗装で使われるステインなどの着色剤は、あくまで色を付けるための「染料」や「顔料」であり、それ自体に木材の表面を保護する機能はほとんどありません。
そのため着色したからOK!というわけではなく、着色後に仕上げ塗装を行う必要があることを理解しておきましょう!
よくある質問
「無塗装の木材」も売っていますよね?
当社ではクリア塗装からマットクリア塗装、着色塗装など内装にマッチするさまざまな塗装木材を展開しています。
そしてその中には、塗装を一切施していない「無塗装材」も販売しています。
ここまでの話と矛盾するように思われるかもしれませんが、これにはお客様一人ひとりが持つ、既製品では叶えられない「こだわり」に寄り添いたい、という私たちの強い想いがあります。
デザイナーの「こだわり」を叶えたいから
- この空間は既成のどの色でもない、絶妙なニュアンスの〇〇色が良い…
- クライアントのブランドカラーを、木の質感を生かしながら表現したい…
プロの現場ではそんな「繊細なデザイン」が求められる場面も多くあると思います。そうした状況下で工場であらかじめ「塗装された既製品」しか展開されていないと、そもそもそのデザインが叶えられない…、と言うケースもあります。
私たちが提供する「無塗装の木材」はそんなデザイナーの方々にとって理想の色と質感を叶えていただきたいという想いから展開しています。
着色やデザイン塗装など、納品後に「やるべきこと」もしっかりお伝えしますので、その点はご安心いただければと思います。お気軽にご相談くださいませ。
「現場塗装」でデザインの自由度を広げたいから
無塗装の木材をお選びいただくということは「現場で塗装を行っていただく」ことになります。
工場塗装に比べて手間がかかる方法ですが、現場の自然光や照明、隣り合う壁材や家具とのバランスを見ながら、その場で色味を微調整できます。
そのためサンプルを見ただけでは分からなかった「空間全体で見たときの調和」をデザインに落とし込むことも可能。
もちろん、
- 現場での手間を省きたい
- 品質の安定した工場塗装品が良い
というお客様のために、塗装を完全に仕上げた製品も豊富にラインナップしております。あらゆるニーズに最適な形でお応えいたします。
内装デザイナーの想いを叶えたい、“木材塗装のすべて”もお任せください。
この記事では、木材塗装の基本を「保護」と「意匠」の2軸で”木材の塗装”について解説してきました。
木材を長く美しく保つためにはまず「仕上げ塗装」が不可欠であり、その選択は風合いやメンテナンス性など、何を重視するかで変わります。
- 仕上げ塗装の重要性: 木材を長く美しく保つために、塗装による表面保護は不可欠。
- クリア塗装の選択: 風合いと経年美の「オイル塗装」、メンテナンス性の「ウレタン塗装」。シーンに応じた選択が鍵。
- 無塗装という選択肢: デザイナーのこだわりに応え、デザインの自由度を最大化する。
当社は内装デザインに合わせて、木工職人が手作業で加工したデザイン済みの木材を豊富にご用意しています。
木材本来のナチュラルな仕上がりはもちろん、和風、モダン、ヴィンテージ感など、内装イメージに合うよう1枚ずつ丁寧にデザインします。
コストや納期、施工の実際まで見据えた柔軟なご提案で、デザインの自由度と機能性・コスパのバランスにもとことん寄り添い、どうしたら実現できるかを一緒に考えていきますので、ぜひお気軽にご相談ください!
この記事を書いた人

Kurumi
2021年入社 / 埼玉県出身 / “他社で断られたデザインを叶える”をモットーに「デザイン×コスト」を踏まえた最適な提案を得意とする。個人で動画制作を行うなどクリエイターとしての一面も。