2025.06.11
この記事を書いた人

Kurumi
2021年入社 / 埼玉県出身 / “他社で断られたデザインを叶える”をモットーに「デザイン×コスト」を踏まえた最適な提案を得意とする。個人で動画制作を行うなどクリエイターとしての一面も。
木材強度・硬さは「気乾比重」で分かる!内装材の選定ポイントも踏まえて解説!

気乾比重とは
気乾比重(きかんひじゅう)とは、木材の重さを表す指標の一つで、気乾状態(きかんじょうたい)の無垢材と、同じ体積の水の重さと比較して求める値です。
具体的には、1立方センチメートル(㎤)の水の重さを1グラムとしたとき、乾燥した木材1㎤の重さが何グラムかを比率で表します。
たとえば、気乾比重が0.6であれば、その木材1㎤の重さは0.6グラムということになります。
気乾比重が1を超える木材は水より重く、水に沈みますが、多くの木材は1未満で水に浮きます。ただし、木材内部に空気を含むため、実際には比重1を少し超えても浮くことがあります。
気乾状態ってどんな状態のこと?
気乾状態(きかんじょうたい)とは、木材やコンクリートの骨材などの材料が、空気中に自然に置かれたときに、その周囲の湿度とバランスが取れた状態を指します。
具体的には、材料に含まれる水分が、空気中の湿度と平衡状態になり、それ以上自然には水分が減ったり増えたりしない安定した状態です。
木材の気乾状態=“含水量15%前後”の状態
木材の場合、伐採直後は多くの水分を含んでいますが、時間が経つにつれて自由水が蒸発し、まず「繊維飽和点(せんいほうわてん)」(含水率約28~30%)に達します。
その後さらに乾燥が進んで、最終的に空気中の湿度と釣り合った含水率(約15%が目安)に落ち着いた状態が「気乾状態」です。この状態の木材を「気乾材(きかんざい)」と呼びます。
気乾材は、木材の強度や寸法安定性が増し、割れや反りが発生しにくくなるため、建築や家具製作などでよく使われる標準的な乾燥状態です。一方、さらに乾燥させて水分をほぼゼロにした全乾材もありますが、これは通常の環境では維持できないものですから、基本的には「気乾材」が使われることが一般的です。
気乾比重は何に使われるの?
「木材の強度」の指標に使われる!
気乾比重というのは木材の硬さ・強度を示す指標として使われます。
気乾比重が大きいほど、木材は重くて硬く、小さいほど軽くて柔らかいです。つまり内装用の天然木を選ぶ際には、気乾比重が「木材の強度」を判断する際の基準となります。
例えば、スギの気乾比重は約0.38と低く、軽くて柔らかい特徴がありますが、湿気に強く、調湿性に優れているため、快適な室内環境を保ちやすいという利点があります。
一方、ナラやケヤキなど気乾比重が0.6以上の木材は、重厚感があり、耐久性や強度が求められる場所に適しています。
生材 |
気乾材 | 全乾材 |
伐採直後の湿った状態 (30%以上) |
自然乾燥された状態 |
水分が完全に除去された状態 (0%付近) |
気乾比重の基準は『0.6』
気乾比重は「0.6」を基準に、それ以上は高比重材、それ以下は低比重材と分類されます。それぞれの特徴は以下の通り。
高比重材(0.6以上) | 低比重材(0.6未満) | |
重量 | 重い | 軽い |
耐久度 | 〇:衝撃に強く長持ちする | △:傷・へこみがつきやすい |
施工性 | △:硬くて加工が難しい | 〇:柔らかく加工がしやすい |
用途 | 床、カウンター(天板) | 壁、天井、その他インテリア |
その他 | 高級材として扱われるケースが多い | 調湿・断熱性能が高い |
高比重材:加工が難しいが、硬く強度が高い
低比重材:傷つきやすいが、肌触りが良く湿度コントロールしやすい
樹種別で見る気乾比重一覧
続いて内装材としてよく使用される「主要7樹種」の気乾比重(参考値)もご紹介します。
樹種名 | 気乾比重 |
ケヤキ |
0.69 |
チーク |
0.69 |
ナラ |
0.68 |
ウォールナット |
0.64 |
クリ |
0.60 |
ヒノキ |
0.39 |
スギ |
0.38 |
内装材としての採用箇所
高比重材の場合
1. 床材(無垢 / 複合フローリング)
▲当社製品の導入事例(ALPHA BETA COFFEE CLUB)
気乾比重が高い木材は、フローリング材として非常におすすめです。
人が頻繁に歩く床は、摩耗や衝撃に強い素材が求められます。気乾比重が高いとその分傷がつきにくく、長期間にわたって美しい状態を保てます。
また、重厚感のある質感や色合いが高級感を演出し、住宅や店舗の雰囲気を格上げします。
特にナラやウォールナットは、耐久性と美観を兼ね備えており、長く使うほどに味わいが増していくのも魅力です。床暖房との相性も良く、住宅の資産価値向上にもつながります。
下記記事ではフローリングに無垢材を使用する際の心配ごと・お悩みについてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。

床鳴り・色褪せは大丈夫?無垢フローリング(床材)のよくある疑問・心配に回答します!
無垢フローリングは、その温かみや自然な風合いから人気のある内装材ですが、選ぶ際にはいくつかの懸念事項があることも事実です。 特に床鳴りや色褪せ、ペットによるキズや汚れの心配は、無垢フローリングを検討している方が抱える共通の悩みでしょう。 しかし適切な知識を持って対策を行えば、これらの心配事を解決
2. 階段材
階段は住宅内で特に荷重や衝撃が集中する場所です。そのため気乾比重が高い木材は階段材として最適です。
階段の踏み板や蹴込み板に用いることで、たわみや割れ、摩耗を防ぐことができ、長期間にわたり安全性と美観を維持できます。
3. カウンター・テーブル天板
キッチンやリビングのカウンター、ダイニングテーブルの天板にも高比重材が最適です。
というのも天板は美観とあわせて耐久性が求められるため、気乾比重が高い木材を使用することで、傷や熱、水分にも強く、長く美しい状態を保てます。
特に無垢材の天板は、内装に重厚感と高級感を与えます。
4. ドア・引き戸など
室内ドアや引き戸には、反りや歪みが少なく、耐久性の高い木材が求められます。
気乾比重が高い木材は、湿度変化にも強く、長期間にわたり形状を保ちます。また、重厚な質感が空間全体に落ち着きと高級感をもたらします。特にホテルや高級住宅では、無垢材のドアが好まれ、遮音性や断熱性にも優れるため快適な居住空間を実現します。
デザインの自由度も高く、彫刻や装飾を施すことでオリジナリティも演出できます。
5. 壁材・天井材(重厚感+遮音性能も)
▲当社製品の導入事例(au style SENDAI / BLUE LEAF CAFE)
気乾比重が高い木材は見た目もズッシリとした印象が強いため、空間に重厚感と温かみが出ます。
また鉄板やコンクリートほどではありませんが、木材そのものの密度が高いため、特に無垢材の場合は「音の反響を抑える」という意味でも低比重木材よりも優れています。
低比重材の場合
1. 壁材・天井材
天井や壁一面に天然木を使いたい場合は、低比重材も推奨しています。
というのも、壁や天井材は広い面積に木材を使うため、重い材料だと施工時や建物への負担が大きくなります。一方で軽いスギやヒノキでは、そういった「建物全体の重量」を抑えられます。
また「軽い=隙間が多い」ということなのですが、これはつまり、湿度の変化に応じて水分を吸収・放出するため、室内の快適な湿度を保ちやすいということです。
さらには断熱性も高く、夏は涼しく冬は暖かい快適な室内環境を実現できます。木目や香りも楽しめ、ナチュラルで明るい空間を演出できる点も魅力ですね。
壁や天井に低比重材を採用したデザイン、和モダンの内装レイアウトのデザイン案についてはこちらをご覧ください!

和モダン(ジャパンディ)内装に最適な木材・デザインレイアウトを解説!
和モダン(ジャパンディ)スタイルの内装デザインとは? 和モダンスタイルとは、昔ながらの日本らしい造りに現代様式に織り交ぜた内装デザインで、別名「ジャパンディスタイル」とも呼ばれています。 フローリングや椅子座といった現代様式はそのままに、手軽に和な「落ち着き・品格」を取り入れられるデザインとして
2. 入浴施設など(湿度が高い施設)
近年和モダンを取り入れた、木材内装ベースの入浴施設が増えましたが、実は合理的に木材が使われているケースがほどんどです。
というのも高温多湿の内装で調湿機能が低い建材を使用してしまうと、材質によっては湿気で壁・天井が腐敗します。
そのため「和のテイストを最大限に引き出すため」というのはもちろんですが、低比重材ならではの利点を活かして“あえて”木材を採用しているケースも多くあるわけです。
内装制限がある中で“天然木材”を使うには
そもそも商業施設などの多くの人が利用する公共空間や、店舗の共用部では、建築基準法によって内装制限が設けられている場所では、原則として可燃性の材料である木材をそのまま壁・天井に使用することができません。
これは火災時の延焼を防ぎ、避難経路を確保するためです。
しかしそういった内装であっても「木の温もりを取り入れたい」「ナチュラルなデザインを実現したい」という設計士・デザイナーのこだわりは多いと思います。実際に当社でもこれまでたくさんの声を聞いてきました。
なぜ木材が使えない場所があるのか
建築基準法では、建物の用途や規模、高さなどによって、内装に使用できる材料に制限を設けています。
特に、火災発生時に避難に時間がかかる可能性のある空間や、火災が拡大しやすい構造の建物では、壁や天井の仕上げ材に「不燃材料」「準不燃材料」「難燃材料」といった、燃えにくい、あるいは燃えても煙や有毒ガスを発生しにくい材料を使用することが義務付けられています(内装制限)。
残念ながら天然木材のままでは、上記の認定材料には該当しないため、内装制限のかかる空間では使用範囲が限られてしまうのです。
当社の不燃突板は、「天然木の風合い」そのままに“不燃”を実現!
当社の不燃突板(ナチュラルボード)は、火山性ガラス質複層板に天然木突板を練付した「内装用不燃ボード」です。およそ0.2mmの天然木を貼り合わせることで、木材本来の「美しさ・肌触り」をそのまま残した不燃内装材を実現しました。
物販店・飲食店の壁をはじめ、キッチン天井やカウンターなどの“内装制限がある箇所”にも採用いただけます。
雰囲気に合ったおしゃれな内装木材はもちろん、木材ならではのデメリットも最大限に抑えた内装材をご提供していますので、ぜひ一度ご相談ください!
当社の手がける「不燃突板」については、こちのページをご覧ください。
関連ページ:『当社の不燃突板について|株式会社オネスト・アンド・パートナーズ』
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