この記事を書いた人

Kurumi
2021年入社 / 埼玉県出身 / “他社で断られたデザインを叶える”をモットーに「デザイン×コスト」を踏まえた最適な提案を得意とする。個人で動画制作を行うなどクリエイターとしての一面も。
杉材(スギ)とは?内装材としての特徴や「導入前に知っておくべきポイント」を解説!

日本の森を歩けばかならず出会う。それほど身近でありながら、実は驚くほど奥深い樹木が「杉(スギ)」です。
縄文時代から神社仏閣、現代のデザイン空間まで、杉はいつの時代も日本人の暮らしと美意識を支えてきました。しかし、「杉材は柔らかくて傷つきやすい」「花粉が多くて困る」という先入観だけで、魅力を見逃してはいないでしょうか。
そこで本記事では、日本で唯一の固有種である杉の基礎知識から、地域による材質の違い、内装デザインで活きる意匠性・調湿性・香りの効果、さらにはメンテナンスや防火対策までを網羅的に解説します!
- 杉ってどんな木材?
- 杉は「日本」にしか生息していないって本当!?
- ヒノキとの違いは?
- 杉のメリット・デメリットは?
- 内装制限がある所でも杉は使えるの?
そもそも「スギ」とは?
杉(スギ)は、ヒノキ科スギ属に分類される日本固有の常緑針葉樹で、日本国内の人工林の約45%を占めるメジャーな樹種として知られています。
また写真のように、スギは黄色みがかった明るい色味と直線的な木目を持つため、特に無垢材として利用することでより上品なデザインを表現することができます。
また古くから建材や酒樽、船舶など様々なシーンで活用されてきた、日本を代表する伝統的な木材なのです。
実は杉は「日本だけ」の固有種!
実は世界には「スギ属の木」は1種だけしか存在せず、その自生域も日本列島に限られます。
学名である「Cryptomeria japonica」は「隠れた財宝(cryptomeria)+日本の(japonica)」という語源を持ち、その名の通り日本だけにしか生息しない固有の樹種なんです。
また”スギ”語源どおり「直ぐ木(すぐき)」と呼ばれるほど木目は通直で、加工性も抜群。
近年のDNA解析でヒノキ科に再分類されるまで独立の「スギ科」として扱われていたほど進化系統も孤高なんです。
成長が速くて、長生きな巨大樹
杉はわずか35〜40年で伐期を迎える速成樹でありながら、屋久島の縄文杉のように樹高50 m超・樹齢2,000年以上という巨木へと成長します。
寒冷地の秋田杉は年輪が緻密で強靭、南九州の杉は粗年輪で柔らかいなど、産地ごとに木質が大きく変わる“性格の振れ幅”も魅力です。
文化財も守る空気清浄木
考古学的には弥生期木材の70〜80%が杉だったという調査結果もあり、杉は古来から生活を支えてきました。
正倉院では宝物を収めた杉製唐櫃が1,300年の時を越えて内部の薬効や染色を守り続けています。文化財保存と室内空気質の改善を同時に叶える、この機能美こそ杉の真骨頂です。
日本でスギ花粉が増えた主な理由は、戦後の木材不足を解消するために多くの天然林が伐採され、成長が早く植林しやすいスギが大量に植えられたことにあります。これを「拡大造林政策」といいます。
この「拡大造林政策」は1960年代から1990年代にかけて進められ、日本の人工林の約7割がスギ・ヒノキとなりました。スギは植えてから約30年後に本格的に花粉を飛ばし始めるため、植林から数十年後に花粉飛散量が急増しました。
また毎年話題にあがる「スギの花粉生産量」ですが、これは前年夏の気象条件(特に日射量が多く、降水量が少ない年)によっても増減します。加えて、都市部のアスファルト化によって花粉が地面に吸着されず、空中を舞い続けやすくなったことや、地球温暖化の影響で花粉の飛散時期や量が増加する傾向も指摘されています。
つまり、日本でスギ花粉が増えたのは、戦後の政策による大量植林と、その後の気象や都市環境の変化が複合的に影響しているためです。
内装材としての「杉の特徴」は?
ここからはより具体的に「内装木材」として利用する際の、スギの特徴を詳しくご紹介します。
特徴1:湿気に強く、腐敗しにくい
まずスギには優れた調湿(ちょうしつ)性があり、湿度の変化に応じて水分を吸収したり放出したりする特性があり、室内環境の快適性を保つ効果があります。つまり夏は涼しく、冬は適度に保湿してくれるというわけです。
また木そのものが腐りにくいという特徴もあり、たとえば「見せ梁り」のような無垢材を活かした内装デザインは、おしゃれな反面、湿気が多いシーズンには水分を含みやすく、無垢材そのものが腐ってしまうことがあります。
しかしスギは湿気の吸放出コントロールが得意なため、湿気による腐敗のリスクが少ないのです。枠線内タイトル

スギが湿気に強い理由は、気乾比重(きかんひじゅう)の低さにあります。
気乾比重とは、木材の重さ・密度を表す指標のことで、この数値が高いほどずっしりと「重厚感のある樹種」となるのですが、スギの気乾比重は『0.38程度』とナラ材の約半分程度※しかありません。
つまり、他の樹種と比べると細胞内部の空洞が多く、水分を吸収・放出するスペースが多くあるため、湿気に強く、腐敗しにくいというわけなのです。
ナラの気乾比重:0.67

木材強度・硬さは「気乾比重」で分かる!内装材の選定ポイントも踏まえて解説!
気乾比重とは 気乾比重(きかんひじゅう)とは、木材の重さを表す指標の一つで、気乾状態(きかんじょうたい)の無垢材と、同じ体積の水の重さと比較して求める値です。 具体的には、1立方センチメートル(㎤)の水の重さを1グラムとしたとき、乾燥した木材1㎤の重さが何グラムかを比率で表します。 気
特徴2:軽くて加工がしやすい
気乾比重が低いという面でいうと、軽くて加工しやすいのもスギの特徴です。
そのため上で紹介した通り、内装材として活用しやすいのに加え、床・フローリング材をはじめ、壁材や大型商業施設の天井材としてまで幅広く利用することが可能なのです。
特徴3:木の風合い(木目・香り)を感じやすい!
スギは木目の美しさや、独特な香りなど「木の風合い」を感じやすいのも特徴です。
先にも解説しましたが、スギ材は黄色みがかった明るい色味と主張の少ない繊細な木目を持っているため、木材のナチュラルな風合いを抑えて品のある雰囲気に仕上げることが可能です。
また杉から出るフィトンチッド(抗菌作用やリラックス効果のある化学物質)はヒノキより高濃度と言われ、リラックス効果だけでなく室内空気質の改善にも寄与します!
宿泊施設で削り屑をディフューザーに用いた実験では、睡眠満足度が平均13%向上。揮発成分はホルムアルデヒドを吸着する性質も持ち、展示ケース内のVOC濃度を低減させた博物館実験が報告されています。
ヒノキと杉の違いは?
ここからは杉と性質がよく似た「ヒノキ」との違いについても詳しく解説していきます!内装材として採用する場合は、以下の特徴を踏まえてどちらを採用すべきか検討いただければと思います!
伐期・重量・コスト:軽くて安価な杉と、重くて高価なヒノキ
杉は伐期35〜40年で経済サイクルが早く、気乾比重0.38とコンクリートの1/12で、ヒノキ(気乾比重=0.41)よりさらに軽量です。
市場価格でも立木1m³あたり約4,100円の杉に対し、ヒノキは約8,900円と2倍強の価格です。つまり杉は、同じ強度を確保する梁材としては、ヒノキよりも材料費を一度に半減できるローコスト・ライトウェイト材というわけです。
ただしヒノキも他の樹種に比べたら非常に軽量で頑丈です。ヒノキはこちらの記事で詳しくまとめていますので、杉材と比較する際にぜひご覧ください!

桧(ヒノキ)ってどんな木材?特徴や魅力、施工事例までご紹介!
桧(ヒノキ)とは? 桧は、ヒノキ科ヒノキ属 常緑針葉樹に属する日本特産の代表的な樹種で、本州から四国・九州、屋久島に至るまで、日本のあらゆる地域に分布しています。 また桧は、その軽軟さや、緻密な肌目、桧特有の香りや美しい光沢が特徴的です。その他にも弾力性や靱性に富んでいるため、狂いが少なく加工性
耐久・強度:“伸びる”杉と、経年変化で“強くなる”ヒノキ
ヒノキは曲げ・圧縮・引張り強度が杉より約2割高く、伐採後200年間はむしろ強度が増すという性質を持っています。法隆寺が1300年間立ち続ける根拠になっていますね。
一方杉は柔らかいものの、黒心材に含まれるフェルギノールやクリプトメリオンがシロアリ生存率を低下させることが判っています。つまりヒノキは「強くなる」、杉は「もともと強い(劣化しづらい)」という違いがあります。
香り・化学成分:森林浴系の杉と、薬理系のヒノキ
「香り」は人によって感じ方が異なりますから、今回はあくまで科学的な香りの観点から。
杉の香気成分はリモネンやセドロール中心で、リラックス脳波を誘発するフィトンチッド濃度がヒノキより高いとされます。
一方ヒノキはα-カジノールとヒノキチオール系が主体で、黄色ブドウ球菌やO-157の増殖を抑制する強力な抗菌作用があることが確認されています。
採用前に読みたい|スギのデメリットは?
ヤニの滲出・色変化が起きやすい
樹脂道に溜まったヤニは室温でも滲出し塗装面を汚染します。
白太にはβ‐クリプトン酸という化学物質が多く、これは高温多湿で流出量が増加します。そのため仕上げにはUV塗装などが有効で、揮発成分を封じつつ木肌の質感を残せます。経年で飴色に変わるのを活かすなら無着色オイルを推奨します!
柔らかい木材のため、へこみ・傷がつきやすい
先にも「加工しやすい木材」と紹介しましたが、その特性上、他の木材と比較してややへこみ・キズがつきやすいという特徴があります。
比重0.38という軽さは”扱いやすさ”の裏返しで、ハイヒールや金属脚が一点に荷重をかけると、1mm以上の凹みが生じてしまうこともあります。
小さな凹みなら水滴を含ませアイロンで加熱すると繊維が膨潤して回復することもありますが、スギを採用する場合は、負荷のかかりやすい床材ではなく、デザイン性の高い天井や壁材としての採用を推奨しています。
スギや桧(ヒノキ)のような柔らかい材料は、キズやへこみが発生しやすいため、土足環境でのご使用は推奨しておりません。
反面、ご住宅案件ではもちろんのこと、飲食店や施設などの、小上がりのような”素足で過ごされる環境”では問題なくご使用いただけます。
キズが付きやすい木材は、その分「質感」が高く触り心地が良いため、素肌に触れる場所に採用することを推奨しています。
もし傷がついてしまったらどうすべき…?
もしフローリングに傷が付いてしまった場合、小さなキズやへこみであれば、下記の手順で補修してください。
①:該当箇所に「水」を少しかける
②:水をかけた場所にタオルをあてる
③:タオルの上から、アイロンを当てる
ただし木材に塗装がされているケースもありますので、水以外は滴下しないようお願いします。
内装制限がある中で“天然木材”を使うには
そもそも商業施設などの多くの人が利用する公共空間や、店舗の共用部では、建築基準法によって内装制限が設けられている場所では、原則として可燃性の材料である木材をそのまま壁・天井に使用することができません。
これは火災時の延焼を防ぎ、避難経路を確保するためです。
しかしそういった内装であっても「木の温もりを取り入れたい」「ナチュラルなデザインを実現したい」という設計士・デザイナーのこだわりは多いと思います。実際に当社でもこれまでたくさんの声を聞いてきました。
なぜ木材が使えない場所があるのか
建築基準法では、建物の用途や規模、高さなどによって、内装に使用できる材料に制限を設けています。特に、火災発生時に避難に時間がかかる可能性のある空間や、火災が拡大しやすい構造の建物では、壁や天井の仕上げ材に「不燃材料」「準不燃材料」「難燃材料」といった、燃えにくい、あるいは燃えても煙や有毒ガスを発生しにくい材料を使用することが義務付けられています(内装制限)。
残念ながら天然木材のままでは、上記の認定材料には該当しないため、内装制限のかかる空間では木材の使用範囲が限られてしまうのです。
当社の不燃突板は、「天然木の風合い」そのままに“不燃”を実現!
当社の不燃突板(ナチュラルボード)は、火山性ガラス質複層板に天然木突板を練付した「内装用不燃ボード」です。およそ0.2mmの天然木を貼り合わせることで、木材本来の「美しさ・肌触り」をそのまま残した不燃内装材を実現しました。
物販店・飲食店の壁をはじめ、キッチン天井やカウンターなどの“内装制限がある箇所”にも採用いただけます。
雰囲気に合ったおしゃれな内装木材はもちろん、木材ならではのデメリットも最大限に抑えた内装材をご提供していますので、ぜひ一度ご相談ください!
当社の手がける「不燃突板」については、こちのページをご覧ください。
関連ページ:『当社の不燃突板について|株式会社オネスト・アンド・パートナーズ』
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